酸素需給バランスの破綻による組織低酸素症を回避するために目標指向型体外循環管理(GDP)が成人領域では普及している。本研究では小児GDPに必要と考えられるパラメーターを後方視的に検討した。当院にて2016~2020年で15歳未満(新生児除く)に行われた非チアノーゼ性心疾患に対する開心術を、人工心肺中乳酸値が2mmol/L未満だったL群と2mmol/L以上だったH群に群分けし、患者背景と手術内容による傾向スコアマッチングを用いた比較を行った。対象は227例、L群193例、H群34例であった。マッチング前はL群でO2ERが有意に高く、VCO2i、P(v-a)CO2、P(v-a)CO2/C(a-v)O2が有意に低かった。各群34例のマッチング後はL群でDO2iが有意に高く、P(v-a)CO2とP(v-a)CO2/C(a-v)O2が有意に低かった。マッチング前後ともにL群で集中治療室入室時乳酸値が有意に低かった。DO2iのCPB中乳酸値≧2mmol/LとなるROC曲線を用いたカットオフ値は389mL/min/m2であった。小児GDPにおいてDO2iは成人領域同様に有用であり、P(v-a)CO2やP(v-a)CO2/C(a-v)O2も重要なパラメーターである可能性が示唆された。
小児心臓外科手術における人工心肺導入時は高度な血液希釈が生じやすく、回路の低充填量化のみでは輸血回避に限界がある。順行性自己血充填(antegrade autologous priming:AAP)は、人工肺出口を遮断した状態で自己静脈血により回路内充填液を順行性に置換し、希釈を抑制する手技である。本研究では体重13~20kgの小児20例を対象に、AAP施行群10例と非施行群10例で比較検討した。AAPにより平均118.0mLの充填液が回収され、AAP施行群では人工心肺開始直後からICU退出時までヘマトクリット値が有意に高値で推移し、人工心肺後希釈率および術中水分バランスは低値を示した。AAP非施行群では病棟にて2例で輸血を要した。AAPは小児人工心肺において充填量削減と希釈抑制に寄与し、輸血回避に有用である可能性が示唆された。