体外循環技術
Online ISSN : 1884-5452
Print ISSN : 0912-2664
ISSN-L : 0912-2664
原著
経皮的心肺補助管理中の溶血回避の重要性とその対策
中島 康佑永田 和之大下 智也村木 亮介有道 真久平岡 有努林田 晃寛吉鷹 秀範坂口 太一
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 44 巻 2 号 p. 81-87

詳細
抄録

経皮的心肺補助管理中に発生する合併症の一つに、溶血がある。溶血発生要因の中に、遠心ポンプの過剰な揚程(陽圧・脱血回路圧[陰圧])運用が言われており、適切な評価・対応が重要であると考えられる。しかしながら、当院においても明確なcut off値の基準が定められていない。そこで2012年から2015年までの経皮的心肺補助を必要とした101例を対象とし、管理1日目の血液検査結果において溶血と記録されたものを溶血有とし、後ろ向きに溶血発生要因に関する因子の検討を行った。結果、溶血有と記録された症例は27例(26.7%)であった。溶血無群と比して、溶血有群において、有意に高い遠心ポンプ揚程(512.9±181.8mmHg、333.4±120.1mmHg;p<0.0001)、脱血回路圧(陰圧)(-317.6±170.9mmHg、-156.7±108.0mmHg;p<0.0001)を認め、溶血の独立リスクの一因子と考えられた。また、これらの因子のreceiver-operator curve解析を行うと揚程430mmHg以上、脱血回路圧(陰圧)-270mmHg以下が溶血リスクのcut off値として算出された。更に溶血有群において急性腎障害発生率(60%[14/23]vs. 13%[7/52];p<0.0001)と有意に上昇していることからも、溶血回避を含めた対策が重要であると考えられた。

著者関連情報
© 2017 一般社団法人 日本体外循環技術医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top