体外循環技術
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原著
アデノシン三リン酸測定を用いた冷温水槽の循環水の腐敗評価
―実用的な冷温水槽の水管理方法―
岡田 ひとみ百瀬 直樹草浦 理恵小久保 領梅田 千典安田 徹岩本 典生山口 敦司
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2017 年 44 巻 2 号 p. 88-93

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抄録

人工心肺には冷温水槽が欠かせないが、そこで使用される循環水の腐敗は患者の生命を脅かすことになる。水道水は河川から採取し塩素消毒を施してあるものの、土壌や排水などからの微量の有機物が含まれる。この有機物は細菌の増殖を促し、水の腐敗を引き起こすことになる。逆浸透水(RO水)は透析室で多量に精製されるが、作製過程でろ過膜によって有機物のみならず電解質までが除去されるため、細菌の増殖には向いていないことが示唆される。今回我々は、模擬的な冷温水槽モデルを作り、循環水中のアデノシン三リン酸(adenosine triphosphate:ATP)定量による水の腐敗を評価し、用いられた循環水の種類による比較検討を行った。実験対象の循環水には水道水±消毒液とRO水±消毒液を用いた。RO水を用いた検体は28日後もATP増加が認められず、10RLU(relative light unit)以下であった。一方で水道水を用いた検体では28日後のATPは最大で1,899RLUと有意に増加していた。目視での観察でも水道水を用いた検体では消毒薬の使用の有無にかかわらず沈殿物を認め白濁していた。清潔度が必要とされる手術室での冷温水槽の循環水にはRO水を用いることが推奨される。

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© 2017 一般社団法人 日本体外循環技術医学会
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