2025 年 52 巻 2 号 p. 165-170
近年、心臓外科手術を受けた患者の細菌感染事例が報告されており、手術室で使用する冷温水槽など水路回路を備える装置の衛生管理が求められている。今回、当院で使用している泉工医科工業社製冷温水槽HHC-300を対象に、人工心肺前後における冷温水槽循環水中に存在する一般細菌数の変化を観察した。貯水には水道法の基準に適合した水道水を用い、循環水と併せて一般細菌数を観察した。冷温水槽に貯水する水道水および人工心肺前後における冷温水槽の循環水をサンプリングし、一般細菌数を測定した。水道水および人工心肺前の循環水中の一般細菌数は3CFU/mL以下であったのに対し、人工心肺後は平均9,100±5,986CFU/mLであり、人工心肺中に大きく上昇することが確認された。この変化に関して、冷温水槽の水温設定が36.0℃付近であり、一般細菌の好発育条件と重なったことや、循環水流によって配管内に残存していた一般細菌が剥離し、循環水中に移行した可能性があることも考えられた。以上から、冷温水槽の衛生管理の重要性が確認され、排水および乾燥、消毒やフィルターの使用等の対策を講じる必要があることが改めて確認された。