1999 年 26 巻 4 号 p. 44-47
【要旨】体外循環を用いた開心術症例群と肺切除術症例群における,血中サイトカイン誘導の比較検討を行った。対象は体外循環群10例,肺切除群9例である。IL-1β,IL-6,IL-10およびTGF-β1の術前および術直後の血中濃度を測定した。体外循環例ではIL-1β,IL-6,IL-10およびTGF-β1ともに有意に増加したが,肺切除例ではIL-1βおよびTGF-β1は増加しなかった。IL-6,IL-10の増加は体液性免疫能に関与しており,両群ともに体液性免疫機構の発現が示唆された。しかし,抑制性サイトカインであり,細胞性免疫能に関与するTGF-β1の増加は肺切除例ではみられなかった。これらのことから,体外循環群は体液性免疫機構のみならず,細胞性免疫機構をも活性化することが示唆され,体外循環群の生体におよぼす非生理的侵襲の強さが示された。