体外循環技術
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体外循環用軟質ポリ塩化ビニルチューブからの可塑剤溶出の基礎的検討
榊原 未和石川 隆志山内 章弘海江 田章豊崎 正人三澤 健治秋山 玲奈石川 正敏杉森 美幸山本 賢服部 良信伊藤 康宏渡邉 浩次井平 勝日比谷 信
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2004 年 31 巻 2 号 p. 139-142

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抄録

体外循環で用いられるポリ塩化ビニルには,可塑剤としてフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)が多量に使用されている。 DEHPは,現在では主として精巣毒性を有する一般毒性物質であると言われている。一方,体外循環回路は生体適合性を改善する目的で種々のコーティングチューブが既に開発されている。今回,市場に提供されている体外循環用チューブのうち,ノンコートチューブとポリエステル可塑剤で二層をなすチューブ(バイレイヤー)と,共有結合とほぼ同等の性能を持つイオン結合によってヘパリンをコーティングさせたチューブ(ヘパリンコート)のDEHP溶出抑制効果を比較検討した。 DEHP溶出量は,ヘパリンコートがノンコートチューブやバイレイヤーに比べ有意に低値を示した。機械的圧力の有無によるDEHP溶出量の比較では,有意な差は見られなかった。また, DEHP分時溶出量は,ヘパリンコート,バイレイヤー,ノンコートの順に多く,ノンコートのDEHP溶出量は,循環時間の経過に伴い比較的急速に増加した。以上よりコーティングチューブは,循環時間が長時間になるほど, DEHP暴露量を軽減する有効な手段であることが示唆された。

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© 日本体外循環技術医学会
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