抄録
急性A型解離に対し,2002年より直腸温28℃で循環停止とする中等度低体温脳分離体外循環を導入し,今回,この方法の安全性を直腸温22℃で循環停止とした症例と比較検討した。対象は直腸温28℃にて循環停止を行った8例をA群,B群は直腸温22℃にて循環停止を行った10例とした。冷却は冷温水設定温度をA群で15~20℃,B群で10~15℃,循環停止温の1~2.5℃手前まで急速冷却とした。3基のローラーポンプによる頸部3分枝に順行性脳分離体外循環(SCP)を開始,直腸温が目標値に達した時点で循環停止とし,ステント付き人工血管を胸部下行大動脈に内挿後閉塞用バルンを留置し下半身送血を開始した。末梢側吻合後送血部位を大腿動脈から4分枝付人工血管の分枝に変更,復温のタイミングはA群,B群とも4分枝付人工血管からの順行送血に変更した時点とし,復温は急速復温とした。循環停止温28℃におけるSCPに起因した合併症や脊髄虚血による障害も認めなかった。中等度低体温脳分離体外循環法は体外循環時間と手術時間の短縮を可能にした。