抄録
てんかん患者164例のワダテスト結果を分析し、言語機能再編や記憶に関する興味ある知見が得られたので報告した。両側大脳半球に言語機能を有する例が25例(15%)見つかり、4つのパターンを示した。完全な両側性でどちらでも失語を生じない2例と、どちらの半球でも失語を生ずる2例、左右に表出と受容が分離した側頭葉てんかんが6例、左半球優位で右にも受容や表出機能が認められた12例と右半球優位で左にも受容や表出機能のある3例があった。てんかん発症が言語獲得年齢と重なる場合に脳可塑性により言語機能の再編成が生じやすいこと、また側頭葉てんかんの悪影響により受容野が焦点の反対側に移動する可能性が示唆された。言語機能再編は女性例、もともと左利き例、左焦点例に生じやすいことが明らかになった。また言語性記憶は、言語優位半球に依存することが示唆された。