2008 年 26 巻 1 号 p. 50-56
小児のてんかん発作においても恐怖感を伴うことは稀ではないが、恐怖感のみを主徴とする場合にはてんかんと診断することは困難となる。我々は、「怖い」と叫ぶことが発症当初には唯一の症状であり、発作間欠期脳波で異常を認めないことから心因発作と診断され、5年を経て徐々に群発状態に至った8歳女児例を経験した。当科初診時には強直姿勢及び複雑幻視を伴う恐怖発作が約10分毎に出現しており、発作時脳波で右中心頭頂部にてんかん発射を認めた。発作はジアゼパム、フェニトイン及びミダゾラム等の静注では抑制できず、抱水クロラールの注腸が奏功した。頭部CTでは異常は指摘できず、頭部MRIで右中心回に限局性皮質形成異常を認め、発作時脳血流SPECTで同部位に血流増加を認めた。感情表出が前景に立ち、発作間欠期脳波や頭部CTで異常を認めない場合においても、発作性の単一症状の反復に対しては発作時脳波や頭部MRIも検討すべきである。