てんかん研究
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症例報告
カルバマゼピンで抗利尿ホルモン不適合分泌症候群を引き起こしたと考えられた、2次性徴未発来の中隔視神経異形成症の成人男性例
平山 恒憲武田 佳子西條 晴美岡田 真由美江添 隆範荒木 克仁浜口 弘曽根 翠鈴木 文晴倉田 清子
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2011 年 28 巻 3 号 p. 409-415

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抄録

カルバマゼピン(CBZ)による抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)や低Na血症はよく知られた副作用であるが、その機序については不明な点が多い。今回、我々はMRI画像やホルモン検査などから、後に中隔視神経異形成症(MIM:182230)と診断した男性にCBZを使用したところ、重度のSIADHを経験した。症例は現在24歳男性、重度精神遅滞と8歳初発のてんかんがあり、11歳時に当センターを初診。発作間欠時脳波では右前頭部から前側頭部を中心に棘徐波複合を認めた。年数回全身性強直間大発作及びミオクロニー様発作があり、バルプロ酸(VPA)とクロナゼパム(CZP)で治療されていた。朝の頭痛やミオクロニー様発作が持続していたため、13歳時からCBZを追加処方した後VPA、CBZ、ゾニサミド(ZNS)、クロバザム(CLB)に変更。CBZを400mgから500mgに増量後、17歳時に頻回嘔吐・脱水と意識障害で2度入院。血清Naも128mEq/Lと初めて低値を認めた。23歳時にもNa 118mEq/Lと補正が必要な状態で入院。尿中Na排泄増加、血中ADH濃度などからSIADHと診断した。現在に至るまで第2次性徴はなく、LH-RHテストで間脳・視床下部性hypogonadismと考えられた。CBZおよびVPAを漸減中止とし、この1年半は嘔吐や血清Naの低下は見られていない。視床下部・脳下垂体の構造または機能異常がCBZによる重度のSIADHのリスクファクターになり得るのではないかと推測された。

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© 2011 日本てんかん学会
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