教育・社会心理学研究
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Fスケールによる人格の研究I
藤沢 〓浜田 哲郎
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1960 年 2 巻 1 号 p. 35-46

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抄録

Fスケールによって測定される人格構造を明らかにするために認知的, 情動要因あるいは社会的-文化的要因および個人的経験的要因等の背景的要因を追究し, 併せてFスケールのresearch vari-ableとしての価値をも検討した。結果を要約すると次の通りである。
A. 日本語版Fスケールの作成
1. 項目得点平均は原著のスケールと殆んど差異がなかった。しかし, SD, DP平均は原著の方が大きかった。即ち, 原著のスケール構造は異質性が大で. 筆者のは等質性が大であると考えられた。
2. 原著と比較して得点差の大きい項目が見出された。これによって, 彼我の文化-社会構造の差異が人格構造に影響を与えていることが示唆された。
3. 原著と比較して一段階信頼度が低く, 筆者のスケールにはまだ改訂の余地が残されている。B. ロールシャツハ・テストとTAT
4. ロールシャツハ図版IとVに多く出現した “威嚇” 反応はFスケール高得点者の人格特徴を示すコンテントであった。
5. TAT図版13の “殺” と “性” 反応は高得点者にドミナントに見られるパターンであると考えられた。
6. 従って, 高得点者の人格には“威嚇” , “殺” , “性” に対する態度指向性あるいは潜在的不安があることか示唆された。
7. 高得点者の反応は多義的な刺激図形に対して不寛容であった。
C. 連想時のGSR
8. 高得点者は性的, 情緒的刺激語に対する連想反応が中性語に対するそれよりも優勢な者がいずれの測度においても多かった。
9. 低得点者の中には中性語に対す反応の小さい者もおり, 反応の仕方が多義的であることを示した。
10. 連想に伴うGSRの潜時は高低両得点者を弁別するに最も有効な測度であった。
11. 刺激語の種類にかかわらず, 反応時間, 潜時, 反射量, 反射持続時間のいずれの測度でも高得点者の数値の方が大であった。
12. これらの高得点者の友応特徴は潜在的な情緒不安あるいは性に対する過度の態度指向性を投影しているものと考えられた。
D. 知覚のかたさ
13. 反転図形の観察において「構え」が反転回数に及ぼす効果は低得点者の方が大きかっに。しかし, 両群間に有意差はなかったが, 分散差は有意であった。
14. 両群の反転比の差異は傾向としては認められるが, 2つのクラスターをのぞぐと有意差はなかった。しかし, 全得点および5つのクラスター得点では有意な分散差が認められた。
15. 反転比とF得点との間には多/自とは正の相関, 自/少とは負の相関が見られたが, 相関性が有意であったのはクラスターfの自/少とgの多/自の2つであった。
16. 全体得点と自/少, クラスターeと多/自との間には有意な曲線相関が見出された。即ち, 反転比がF得点へ回帰することが示された。
17. この事実は低得点者にsubgroupとしてのrigid lowsの存在が明らかになった。
18. 従って, Fスケールによる人格の硬さと知覚の硬さとの関係が, 図形反転における多義性不寛容の形で現われることが検証された。
19. この関係は全得点とだけでなく, クラスターd以外の全てのクラスターとの間に認められ, 特にクラスターe, f, gは図形反転と密接な関係にあると思われた。

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© 日本グループ・ダイナミックス学会
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