教育・社会心理学研究
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階級意識の因子分析的研究
古野 洋子
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1962 年 4 巻 1 号 p. 104-113

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抄録
因子分析の結果次の4つの因子が見出された.
(1) 第I因子…企業意識からの離脱. これはイデオロギー的次元と心理的次元を含んだもので, 階級意識の構造中で企業意識ということがかなり中心的なものとしてみられる.
(2) 第II因子…仲間意識. これは比較的企業意識から独立したものと考えられ階級意識の構造中, 企業意識についで大きな部分をしめる.
(3) 第III因子…地についた進歩主義. 現状把握に於ける進歩性をあらわす.
(4) 第IV因子…イデオロギー的階級意識. 古い意識の残存を伴っている.
結局現実の階級意識にはイデオロギー的なものと階級心理といったものが併存している.
仮説について検討すると (1) のいくつかの次元ということはある程度いえるが, どの様なヒエラルヒーをなしているか明らかでない. (2) については企業意識の (3) (19) (24), 連帶感の (6) (7) (14), 組合意識の (15) (16), 現状認識の (10) (17) (18) のごとく, かなりまとまって同傾向を示していることから, あるいは前述したごとき4つの因子が見出せたことなどから, この仮説は妥当なものといえよう. (3) において日常感覚的連帶感 (それは仲間意識といった方が適切だと思われるが) を中心的なものとしたのは, 第II因子の存在でまあ妥当であったといえようが, それより大きな意味を持つものとして企業意識が中心にあることが判明した.
この労組に於ける階級意識とは, 企業意識を中心とし, 仲間意識, 地についた進歩主義がそれにつぎ, 又そこには公式進歩主義もみられるといった具合に, 階級心理とでもいったものからイデオロギー的なものを含めたものである. 中心の企業意識という観点が, 会社が危機にあったこの労組だけのものなのか, あるいは一般化出来るものかについては問題があり, より広い研究にまたねばならないが, 一応, 一般的にも云えるであろうことが予想される. 4つの因子の妥当性に関しては政党支持, 政治斗争参加という面で一応保証されたと考えられるが, 第III因子については, 云えない.
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© 日本グループ・ダイナミックス学会
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