教育・社会心理学研究
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自己関与の口述におよぼす社会的強化
言話と身振りの効果の差異
横田 澄司
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1966 年 5 巻 2 号 p. 161-187

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抄録

本実験は, self-other patternを社会的強化の観点から行なわれた. 被験者は, 小学校5年生の男女生徒で, 実験者がTaffel, C. の文章完成法にもとずき, 提示される刺激動詞は, 筆者がBales, R. F. の社会的相互作用過程分析に使用ざれたカテゴリーに準拠し, そこから60語が作成された. さらに, 側に掲示してある6つの代名詞 (わたしは, あなたは, かれは, かのじょは, わたしたちは, かれらは) の中から1つを選択して, 先の刺激語と結合し, 一つの文章を完成させていくことであった. 被験者80名は, 強化期間に実験操作するため, AV群 (言語による承認群), AP群 (身振りによる承認群), DV群 (言語による否認群), DP群 (身振りによる否認群) と, どのような操作も加えられないコントロール群, それぞれ16名にわけられ, オペラント期間, 強化期間, 第1消去期間, 第2消去期間における 「わたしは」 「わたしたちは」 と結びつけた文 (自己関与の口述) の頻度と, 実験終了後の質問紙の結果と, 各期間毎に提示された刺激語の想起頻度を検討していった.
1) まず, 「自己関与の口述頻度」 については, オペラント期間ではどの群間にも有意差はなく, 強化期間では承認およば否認の操作に関してのみ有意であり (F=4. 48, P<. 05), 第1消去期間でもその傾向が認められ, 第2消去期間においても承認およば否認に関して差が認められた (F=10. 46, P<. 01). なお言語であれ, 身振りであれ, その評価方法間による差は認められなかった.
2) 質問紙の結果による 「評価過程における自己関与の定着」 については, 「最初に浮んだ文章をのべたか」 に関して, AV群が 「その通りだ」 ともっとも高く, コントール群との差があり, 6つの代名詞をどのように選択したのかに関して, AV群とDP群に無解答が多く, その他の群の解答者を含めて承認群 (AV, AP群) は 「文章表現上の反応」 が中心であった. 否認群は 「自信のなさ」 「他者への責任の転嫁」 が認められ, 6つの代名詞の使用頻度にもとづく順位は, どの群も 「わたしは」 を第1位に順位づけられたが, 特にAP群とDV群は一致度が高く, その理由についての自由記述では薄検討すべき問題点が残されている.
3) 提示されに刺激語の想起については, オペラント期間および第1消去期間, 第2消去期間では, どの群にも有意差が認められず, 強化期間にわいて, コントロール群 (X=3. 56) とDP群 (X=1. 88) の平均想起の頻度において, またDV群 (X=3. 31) とDP群において有意差が認められた. またpositiveな刺激語, negativeな刺激語について, それぞれ各群のXX2検定 (2×2分割表) では, 両方の刺激語に対する想起が第一消去時間のみ有意差が認められ, その中でもAV群がもっとも高いことが認められた.

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© 日本グループ・ダイナミックス学会
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