教育・社会心理学研究
Online ISSN : 1884-5436
Print ISSN : 0387-852X
ISSN-L : 0387-852X
“成員強化値”測定試論
集団の構造強度に対する成員の寄与性についての数量化
狩野 素朗
著者情報
ジャーナル フリー

1966 年 6 巻 1 号 p. 37-48

詳細
抄録

集団構造の結合度に対する成員の寄与の度合いを, グラフ論的方法によって尺度化することを試みた。まず集団の結合度は構造強度の概念を用いることによって数量化され, 強度値Iとして尺度化される。
与えられた構造Mの強度値がIであり, Mから点aにかかわるすべての関係を除去した構造M'の強度値がI'であるとき, (I-I') の値を成員aの強化値とする。この強化値は構造強度に対する各成員の寄与度を順位尺度的に測定する指標である。
強化値の指標をHararyらによって提出された強化成員, 弱化成員の概念と比較するとつぎの如くなる。
第1にHararyらによる指標は, 連結性に対する強化と弱化という寄与性の方向を区別するものであるが, 強化値の指標はすべての成員を強化の度合いに関して尺度化する。
第2に同じ集団内の各成員の寄与度に関し, Hararyらの方法によって与えられる順位と, 筆者による強化値によって与えられる順位とは, かなり高い正の相関を示すが, 強化値の尺度の方が成員の順位をより細かに弁別することが可能である。すなわち測定用具としての精度 (弁別性) は強化値尺度の方が高い。
成員の寄与度を算出する過程において構造結合性に関する概念としてHararyらの指標においては連結度を, 筆者の指標においては構造強度の概念を用いている。両概念は類似点とともに差異点を有する。連結度の特質は到達可能性であり, 構造強度の特質は全体的稠密性である。したがって成員間の到達可能性を特質とする集団行動に対しては連結度によるモデルが, また構造の全体的稠密性を特質とする集団行動に対しては構造強度によるモデルが有効であると思われる。

著者関連情報
© 日本グループ・ダイナミックス学会
前の記事 次の記事
feedback
Top