抄録
パルスNMRによる緩和時間の測定により、冷凍保存中の食品の品質低下を評価する基礎実験として7種のデンプン粉末試料をモデル食品として取り上げた。所定の操作で作成したデンプンゲル試料について「作成したて」、および市販冷蔵庫の「チルドルーム7日間保存(0℃)」と「冷凍庫7日間保存(-18℃)」の3種の試料についてCPMG法による1H-MNR(水分子)の緩和時間T2の測定を行った。これらのデンプンゲル中の水分子に関する緩和時間は作りたて試料で20ms〜184ms、冷凍庫保存で24ms〜153msと大きなばらつきがあった。小麦、トウモロコシ、うるち米、もち米、および蕎麦に関する減衰曲線は単一の指数関数で近似でき、これらのデンプンゲル中に取り込まれた水分子は比較的均一であることが分かった。一方クズとジャガイモデンプンゲルでは減衰曲線は二つの指数関数の和で近似され、これらのデンプンゲル中の水分子は不均一であることが分かった。デンプン質食品の評価の代表的な指標である糊化度とT2はジャガイモを除き、良好な直線関係を示し、緩和時間T2がデンプン質食品の品質評価の指標として用いることができる可能性を示唆した。またT2はジャガイモを除く全試料で「作成したて」>「冷凍庫7日間保存(-18℃)」>「チルドルーム7日間保存」の順に小さくなり、冷凍による食味の低下と対応していることが分かった。