日本食品化学学会誌
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論文
マハタへの経口投与におけるアルギン酸オリゴ糖の吸収性と免疫機能への影響
西川 徹横瀬 健宮木 廉夫門村 和志築山 陽介山本 美子山口 健一小田 達也
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2010 年 17 巻 1 号 p. 18-26

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抄録

アルギン酸オリゴ糖のマハタにおける消化管吸収を調べるため、アルギン酸オリゴ糖分析法を検討したところ、液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析計(LC-MS/MS)を用いることによってマハタ血漿中アルギン酸オリゴ糖の検出が可能であった。アルギン酸オリゴ糖の三量体のピークを基準ピークとして検量線を作成し、重量濃度5%及び10%となるようにアルギン酸オリゴ糖を添加した試料を単回経口投与し、6時間後のマハタ血漿中アルギン酸オリゴ糖濃度を定量したところ、その濃度はそれぞれ6.5μg/mL及び7.9μg/mLであった。それ以降の血漿中濃度を調べたところ、投与54時間後の血漿においても比較的高い濃度でアルギン酸オリゴ糖が検出された。これは我々が以前報告したマウスにおける動態とは異なる結果であった。また、アルギン酸オリゴ糖混合飼料投与群とアルギン酸オリゴ糖非添加飼料投与群の二群に分け、マハタ稚魚を飼育用タンクで二週間飼育後、ウイルス性神経壊死症(VNN)の危険がある外海の生簀に放流し、各群の生存率を調べたところ、60日後ではアルギン酸オリゴ糖投与群と非投与群で生存率に大きな差が確認された。またこれと同時にアルギン酸オリゴ糖腹腔内投与後のマハタ血中サイトカイン類をBio-Plexアッセイにより調べたところ、免疫系サイトカイン類の誘導がみられ、特にTNF-αの誘導が顕著であった。これらの結果により、経口投与したアルギン酸オリゴ糖は消化管吸収され、長時間血中に留まっていることが分かると同時に、アルギン酸オリゴ糖の持続的な滞留がTNF-αの誘導を中心とした魚類の免疫賦活に寄与していることが示唆された。

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© 2010 日本食品化学学会
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