日本食品化学学会誌
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市販アナトー色素及び水溶性アナトー中の水銀及びカドミウムの含量
米谷 民雄椛島 淳一久保田 浩樹杉本 直樹佐藤 恭子
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1998 年 5 巻 2 号 p. 226-229

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抄録

EUの食用着色料に関する指令では、ヒ素に加え、水銀、カドミウム、鉛の単独規格が設定されている。一方、JECFAの現行のannatto extractsの規格においては、単独重金属の規格はなく、重金属試験による規格が設定されているのみである。しかし、最近のJECFAにおいては、有害金属、特に鉛の個別規格を設定する方向で動いている。他方、我が国にはベニノキの種子から得られる着色料として、合成添加物の水溶性アナトーと天然添加物のアナトー色素及びベニノキ末色素の3品目があるが、成分規格は水溶性アナトーに設定されているのみであり、また、その有害金属に関する規格は現行のJECFA規格と同様である。そこで、我が国の3品目の規格において、今後、水銀とカドミウムの個別規格が必要かを調べる目的で、JECFA規格のannatto extractsにほぼ対応するアナトー色素及び水溶性アナトーの市販製品23種につき、水銀及びカドミウムの分析を行った。その結果、水銀に関しては、4製品で0.1μg/g以上の水銀が検出され、最高値は2.25μg/gとEUの規格値(1 mg/kg)を越えていた。一方、カドミウムに関しては、すべての製品で、EUの規格値(1 mg/kg)の1/10以下であった。以上の結果から、カドミウムの規格は必ずしも設定する必要はないが、水銀の規格は設定した方がよいと考えられた。

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© 1998 日本食品化学学会
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