日本食品化学学会誌
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論文
紅茶テアフラビンによるコレステロール生合成酵素阻害作用
阿部 郁朗関 貴弘野口 博司原 征彦
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2000 年 7 巻 1 号 p. 47-50

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抄録

コレステロール生合成律速酵素のひとつ、スクアレンエポキシダーゼ(SE)(EC1.14.99.7)は、コレステロールの生合成における最初の酸素添加反応を触媒する膜結合性のフラビンモノオキシゲナーゼである。既に我々は、大腸菌において発現させたラット組み換え酵素を用いて、天然より酵素阻害剤のスクリーニングを行った結果、緑茶由来の(-)-epigallocatechin-3-O-gallate(IC50=0.69μM)など、ガロカテキン類が、強く選択的なSE酵素阻害活性を示すこと、さらにこれが緑茶のコレステロール低下作用の一因となっている可能性について言及した(Abe et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 268, 767, 2000)。本論文では、紅茶のポリフェノール成分であり、茶葉カテキンが醗酵過程で酵素酸化を受けることにより重合して生成した、テアフラビン類も同様に、以下のようにいずれも1-5μM程度のIC50値で、強いSE酵素阻害活性を示すことを報告する。theaflavin(TF-1)(IC50=5.0μM), theaflavin-3-gallate(TF-2A)(IC50=1.0μM), theaflavin-3'-gallate(TF-2B)(IC50=1.0μM), theaflavin-3,3'-digallate(TF-3)(IC50=1.0μM)。従って、紅茶についても、緑茶の場合と同様なメカニズムで、コレステロール低下作用を期待できる可能性が示された。また、SE酵素による酸素添加反応は、酵素活性中心におけるフラビンC(4a)-O-O-Hの生成を経て進行するものと考えられており、こうした酵素阻害効果はガロイルエステルのSE酵素活性中心への特異的な結合と、ガロイル基による活性酸素種のトラッピングによるものと推測された。

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© 2000 日本食品化学学会
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