森林利用学会誌
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論文
林道開設地における渓流水の浮遊砂濃度の変化
呉 在萬井上 章二
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1998 年 13 巻 3 号 p. 161-168

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抄録
林道開設に起因する渓流水質の変化を把握する目的で,林道の影響を受けない山地流域として観測点AとB,林道の影響を受ける観測点Cの3か所で浮遊砂濃度と濁度を測定し,降雨因子ならびに流量との関連性について検討した。その結果,以下のようなことが明らかになった。1)浮遊砂濃度と共に測定した濁度は,浮遊砂濃度との相関関係が認められ,今後,浮遊砂濃度の補助的指標になりうると考えられる。2)山地流域の渓流で発生する浮遊砂流出は10分間降雨強度よりも1時間降雨強度の影響を受ける。しかし,林道路面およびのり面からの土砂流入がある場合は,1時間降雨強度よりも10分間降雨強度の影響を受ける。さらに,短時間の降雨強度が急増すると,降雨と同時に多量の浮遊砂が林道路面およびのり面から流入するため,流量のピークに先行して浮遊砂濃度のピークが現れる。3)林道の影響を受けない場合は,流量Qと浮遊砂濃度SSCとの間にはSSC=aQ^b (a,b:係数)なる関係が全体的には認められるが,林道からの土砂流入がある場合は,流量と浮遊砂濃度には直接的な関係は認められなかった。このときは顕著なヒステリシス現象が確認された。
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© 1998 森林利用学会
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