抄録
木材認証制度は,持続可能な森林経営を目指した取り組みのひとつで,複数の国際機関で議論されている。本論文では,通産省などへのヒアリング調査に基づいて,ISO(国際標準化機構)による森林経営の認証が行われるまでの経緯をたどり,制度の特徴を考察した。ISOの規格は設立当初,主として工業製品のサイズや重量を対象としていた。しかし,1992年の地球サミットにおいて産業分野でも持続性のある技術が提唱され,1995年には環境管理を目的としたISO14001(環境マネジメントシステム)の発効によって,事業体の生産活動の認証が規格に含められた。ほぼ同時期に,カナダとオーストラリアの提案で技術報告書の作成を検討する作業グループが設置され,1998年にその最終版が採択された。ISO14001の内容で特徴的なのは,資源の採取部分までを認証の範囲としたこと,生物多様性を環境影響評価項目に含めたこと,基準・指標づくりに住民参加が必要と定めたことの3点であり,ISOによる認証は持続可能な森林経営に貢献しうるものと評価できる。