本研究は,吉野林業地域の中心地である川上村を対象に,木材価格の長期低迷,林業採算性の悪化が深刻化する近年における村外山林所有者の山林管理組織である山守の質的変化の実態を明らかにすることを目的とした。1965年の山守名簿をもとに2004年に実施した山守への聞取調査の結果,総数243名のうち廃業,または消息不明のものが54%に達した。管理規模の小さい山守ほど廃業が進む傾向にあり,管理面積が100ha以下の山守では,山林への収入依存度が低く,兼業化,高齢化がより進行しており,将来的には単なる境界管理者となる可能性が高いと考えられる。また,管理山林における事業量が減少傾向にあるなかで,一部の山守では管理山林以外,さらには村外への素材業の展開がみられた。