抄録
日本でも森林を中心とする自然地域レクリエーションの費用負担が課題となっている。その背景には公平性にもとづく受益者負担の考え方と過剰利用に関わる管理問題の顕在化があげられる。本論では国立公園と国有林を中心とする有料化の歴史的展開を明らかにし,レクリエーションにおける有料化の状況を分析した。その結果,国立公園においては最初にコンセションの導入と有料化を検討したものの実現せず,その後,駐車場など施設中心で展開した。一方で,国立公園と重複する割合の高い国有林においては地代が中心であったが,それが対象空間の管理に活用されるようにはならなかった。レクリエーションの森において入域料は導入されたが限られた場所でのみ十分な収入があるに過ぎない。いずれも良好なサービスによる利用者への満足感の提供という積極的な管理手法としての有料化の位置づけが未発達である点や,空間の重複管理のためかコンセションが存在しない現状が明らかになった。