林學會雑誌
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エゾマツ樹體内に於けるキクヒムシ科昆蟲の分布(豫報)
玉貫 光一
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1932 年 14 巻 5 号 p. 321-347

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抄録

一、今囘樺太榮濱郡白縫村字保呂所在樺太廰中央試驗所附屬試驗林に於て、秋季に於けるエゾマツ樹體内のキクヒムシ科昆蟲の分布状態を調査したるに、六族九種ありて内二種は未記録の種類なりき。
二、是等キクヒムシ科昆蟲は、寄生母樹の樹貌によりて分布状態を異にす。而して寄生母樹は、下記三型に分ち得べし。
1.樹皮面粗〓にして厚きもの
2.樹皮面平滑にして薄きもの
3.胸高直徑六糎以内の小徑木
以上の中第一型に屬するものは、林内に最も多し。
三、キクヒムシ科昆蟲は母樹の構造特に樹皮の構造によりて、規定せらるゝものの如く、樹幹、枝條等の外形によりて、規定せらるゝにあらざるが如し。
四、エゾマツの樹内には、少くも數種のキクヒムシ生活し、然も是等は各分布圏を異にし、同一箇所にOvercrowdして生活する少き事等より類推するときは、是を枯死せしむるは、只一種のみの結果によるものにあらざるものの如し。然れども、其の範圍、分布頭數の如何等によりて、重要なる種類と然らざる種類とを類別するを得べし。
五、樹皮面の向きと分布状態との關係に就きては、樹幹部に於ては大體に於て南面に蝟集すること多き傾向を示せるも、枝條部にありては、各種類によりて甚だしく差異ありて一律に論ずるを得ず。

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