編集者のコメント
令和3年(2021年)日本森林学会誌論文賞
この論文は、九州北部のスギ造林地を対象に、様々な植生タイプを網羅する44林分100プロットにおいて2,765本のスギが調査し、その結果、成長休止期の時点で次回の下刈り要否をスギ植栽木の樹高に基づいて判断する基準を植生タイプごとに示したものである。下刈りコストの削減は,我が国の再造林,ひいては持続的な森林経営の実現のために必要不可欠なテーマであるが、その点に関して重要かつ具体的な提言を行っていることから、高い社会的波及性を認めることができる。調査のサンプリングは綿密に計画され,種に特有な空間獲得・空間修復能力に着目して種間競争を評価し,最終的に下刈り要否の判断基準における種組成の重要性に言及した点は高い新規性・進歩性を有する。また、データの重厚さ,論点の簡潔性,科学的手法への重要な提言など、今後の当該分野の研究の発展につながりうるものであることから、学術的発展性も高いもとと認められる。