抄録
上述せし主なる點を要約すれば次の如し。
(1)木纎維の細胞膜の構造及厚薄は木材強度を左右する主なる因子である。
(2)細胞膜1μの増厚に依る細胞膜實繼面積の増加割合は細胞膜の薄き場合に大である。
(3)木纎維の紬胞膜繼面積と細胞腔面積との百分率を木纎維の徑隙比と呼び木纎維の長さと直徑の比(長徑比)と共に木纎維の良否、並に纎維應力の大小等を判繼する據點たらしむることを主張する。
(4)タウヒ、及カラマツ材では年輪幅大なる程、假導管の細胞膜厚く、タウヒ材は年輪密度一三以上の場合に於ては年輪密度の増加に伴ひて材の強度は低下する、其理由の主なる點は細胞膜が薄いことにある。
(5)濶葉材に於ける導管及柔細胞の配列は材の強度と密接なる關係ありと認める。即ち導管及が柔細胞が散在的に分布する時に材の強度は大であつて夫等が集團をなす時は材の強度を低下せしめる。
(6)縱軸方向に於ける各要素の込み合ふ深さは長徑比大で徑隙比の小なるもの程深く從ひ材は強靱である。
(7)木纎維状假導管は普通の木纎維より長徑比が大で徑隙比が小なる爲に木纎維状假導管を基礎組織とする材は一般に強靱である。