日本林學會誌
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旋囘木理の成因とその影響に就て豫報成因に就ての基礎的一考察
大島 卓司
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1934 年 16 巻 7 号 p. 561-571

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抄録

1.本稿は旋囘木理の成因、從つて樹幹旋囘の原因に就て、既往の研究を基礎として、之に若干の所見を加へたものである。
2.樹幹旋囘の成因に就ては種々なる學説があるが、未だに定説はない様であつて、大別すれば立地説及遺傳説に分たれ、立地説は更に日光説、風壓説、位置説、土壌説、菌類説、等に細別される。
3.月光説は地軸傾斜説と共に餘り妥當性がない様に思はれる。
4.風壓説は可成り有力な反體論も存在するが、一概に否定し得ないものゝ如く、假に風壓が樹幹の旋囘性を支配し得ないとしても、少くも之を強調する場合はあり得るものと考へられる。
5.位置説は無視し得ないとしても、極めて微弱であつて、その相關々係は決して單純なものではないであらう。
6.土壌説にも賛否兩論が存在するが、少くとも著者の觀察範圍内では樹幹の旋囘が土壌に關係ありとは認め難い。
7.菌類説は特殊の場合を説明し得ても、一般旋囘の説明には不充分だと思はれる。
8.相當明確な遺傅説も現はれてゐるが、總ての樹種、總ての地域に適用し得るかに病就ては尚疑問の餘地なしとせず、今後の研究を要するであらう。
9.著者は從來餘り顧みられなかつた樹根との關係に就て觀察し、次の關係が存するらしいことを知つた。
(1) 樹幹の旋囘せざるものは根形も亦旋囘せす.放射型に發達してゐる。
(2) 樹幹の旋囘せるものは根形も亦旋囘し、風車型に發達してゐる。
(3) 樹幹の旋囘方向とは反對である。
10.前項の相關關係は著者の観察範圍内に於けるイスノキに就て認められたと云ふ迄で、尚幾多の問題が未解決のまゝ殘されてゐるが、今後に之等の點に就て研究を續けたい。

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