日本林學會誌
Online ISSN : 2185-8195
Print ISSN : 0021-485X
ISSN-L : 0021-485X
林木種子低温發芽促進に就て(豫報)
新妻 五郎
著者情報
ジャーナル フリー

1936 年 18 巻 8 号 p. 563-587

詳細
抄録
既述せる諸成績を摘録すれば次の如し。
I 窒内に於ける豫備試験
1. 低温豫措を行ひたるものは,何れも無豫措のものに比し,發芽勢優れり。
2. 泥炭を用ひ種子に直接水分を與へたる場合,トドマツ種子は2種の濫度としてO°C及5°Cの温度を經由せるもの成績良好にして,1種の温度は5°C(1ケ月)のもの良好なり。カラマツ種子に於ては,2種の温度として0°C及5°Cの温度を經由せるものよく,1種の温度としては0°C又は5°C(1ケ月)をよしとせり。ストローブマツに於ては,2種の温度として5°C及10°Cの温度を經由せるものよく,1種の温度としては10°C(1ケ月)を良好とせり。
3. 濕氣中に種子を置きたる場合,トドマツ及カラマツ種子に於て,2種の温度として5°C及10°Cを經由せにものよく,1種の温度としては10°C(1ケ月)のもの良好なり。
4. 濕氣中に置きたるものは直接水分を與へたるものに比し其發芽勢稍弱し。
II 圃上に於ける試験(第1囘)
1. 發芽開始は,一般豫措を施せるものは何れも無豫措より早し。個所としては,一搬室内層積のもの他より早き傾向あり。土室及雲中層積間には大差なし。
2. 發芽率は,一般豫措を施せるものは無豫措より著しく高率なり。然れども室内短期積のものは,低率のものあり。トドマツ及カラマツに於ては個所として土室層積のもの最もよく,雪中層積のもの之に亞ぎ室内層積のもの稍劣れり。ストローブマツの場合は,寧ろ室内層積のもの最もよく,土室層積之に亞げり。
3. 發芽旺盛期は,一般豫措を施せるものは無豫措のものより早し。トドマツ及カラマツ種子は室内層積のもの土室層積のものより稍後く,土室及雪中層積間には差少し。ストローブマツは室内層積のもの他より早く,雪中層積のもの稍後る。
4. 總發芽數の50%及90%の發芽を終了するに,豫措を施せるものは,一般無豫措のものより少日數なり。トドマツ及カラマツ種子は,土室層積のもの最も少日数にして,室内層積のものは多日數なり。土室,雪中層積間には差なし。
III 圃上に於ける試験(第2囘)
1. 發芽開始所要日數は,何れの個所も豫措期間長期となる程所要日数少なし。個所としては室内層積概して少なく,土室層積之に亞ぎ雪中層積稍多日数なり。
2. 室内層積に於ては長期間層積のもの發芽勢優り,發芽率は短期間層積のもの優れり。土室層積に於ては長期間層積のもの發芽勢優り,發芽率は50日豫措のもの率高く,之より短期又は長期となれば,低下する如き傾向あり。雪中層積に於て發芽勢は長期豫措のもの旺盛にして,發芽率は豫措期間の長短による差少なし。
3. 發芽旺盛期は,宝内長期豫措のもの早く,土室層積の長期のものは,雪中層積の長期のものに比し早し。總發芽數の50%及90%の發芽を終了するに室内層積のものは,豫措期間短くなるに從ひ多日數を要し,土室及雪中層積のものは,稍長期層積となれば其豫措期間の長短による差少なし。一般の成績は室内のもの最も日數を要し,土室層積は雪中層積より少日數なり。
IV 低温豫措種子の貯藏試験
1. トドマツ
i) 室内貯藏に於て,豫措種子貯藏のものは,瓶鹽化石灰以外のもの,其發芽率稍無豫措種子貯藏のものより低率となれり。發芽勢に於ては,豫措種子貯藏瓶鹽化石灰は著しく優勢なり。
ii) 土室貯藏に於て,豫措種子藏のものは,其發芽數著しく高率にして,發芽勢に於ても優勢なり。
2. カラマツ
i) 室内貯藏に於て,豫措種子貯藏のものは,何れも發芽牽及發芽勢共優さり。
ii) 土室貯藏に於て,豫措種子貯藏のむのは,何れも發芽率及發芽勢優れり。
以上を以て成績の概要を摘録せるも尚群細に渉りては本試驗場報告により發表の豫定なり。
著者関連情報
© 日本森林学会
前の記事 次の記事
feedback
Top