日本林學會誌
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屋久島濕原の花粉分析
宮井 嘉一郎
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1938 年 20 巻 7 号 p. 400-410

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抄録

1. 屋久屋の高地には諸所に水蘚濕原が發達してゐる。その内最大のものは花江河に在り厚さ150cmの泥炭が堆積してゐる。蓋し本邦に於ける此種濕原地の南限として生態學上興味ある存在である。
2. 花粉分析の結果を通覽するに濕原の表層には著しく下部帶に生育する樹種の花粉を含むことが多い。これは當地の如き孤島山地の濕原では花粉散布の問題を取扱ふに垂直的移動を重親すべき必要あることを示すものである。
3. 本島は植物區系上日本々土の延長でその南限に當つてゐるがブナ及びミヅナラを缺く。花粉分析によつて泥炭下層まで追跡しても之等の花粉は全然發見されない。
4. 過去に於ける本島山地の森林は大體に於て針葉濶葉兩樹種交代の歴史を經てゐる。
5. ミヅゴケ胞子の多少は局地的に泥炭形成速度を判定する手懸りと爲し得ることがある。ヒカゲノカヅラ胞子の出現はミヅゴケ胞子と隨伴的である。
6. 泥表層は上下2層に區別せられその間に炭化度の躍進事實が認められる。

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