日本林學會誌
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二三の單寧材料とその鞣皮試驗
白尾 輝高
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1943 年 25 巻 12 号 p. 589-595

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抄録
1. Rhus屬の葉は乾物量に對しヤマウルシ13.2%,ハゼノキ9.58%,ヤマハゼ5.47%の單寧を含む。又ヌルデ2.28%,ウルシノキ1.48%の數字を得てゐるが之は採集後堆積中一部腐敗の感があつた材料であるから乾燥に注意し再試すれば更に高い數字が得られるかと思ふ。
尚上記の結果は秋季落葉前のものに就て調べたものでヤマウルシのみ夏季の採集である。ヤマウルシが特に高い數字を示してゐるのは季節の關係であるか否か更に檢討の必要がある。
2. ウラジロエノキ樹皮は12.31%の含量を示してゐるが,之は採集部位に依つて相當異るべく本數字は樹齡10年生位の樹幹の皮を混合せるものである。
3. 單寧抽出量は抽出液の温度上昇と共に大となるが,室温附近の水にても100°Cの場合の約半量は抽出される。
又抽出時間は長くなる程勿論総抽出量を増すが,單位時間の抽出量を考慮に入れると, Rhus屬の葉は1.5時間,ウラジロエノキの樹皮で2.5時間位を經濟的とする。
4. Rhus属の葉中の單寧は共にpyrogallol系で,ウルシノキに多少Catechol系が混じてゐる様である。ウラジロエノキの樹皮のものはCatechol系である。
5. 鞣皮試驗の結果はRhusの葉は灰褐色,ヤマウルシでは特に淡色の薄手の製品を得,薄物に適すと思はれる。
ウラジロエノキでは赤褐色の製品を得,厚物に使用されると思ふ。實際に於ては種々の單寧が混合して用ひられるが本樹皮單寧の單用でも充分鞣劑となると言ふ事が出來る。
(追記) 本報は筆者が京大林學教室にて卒業論文として提出せるものの概略である。實驗は現在寧單に關し特に研究を進めつゝある生物化學研究室井上教授の指導下に行へるもので,未だ未熟不充会の點ありとは思はれるが單寧資源に關する一資料たるものと考へ茲に敢へて發表せしめる事とした。(尾中文彦)
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