日本林學會誌
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華北・蒙疆地方の黄土と其の造林學的性質
芝本 武夫
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1943 年 25 巻 5 号 p. 207-218

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抄録

1. 黄土は殆んど石礫を含有することなく,粗砂に乏しく,細砂及び微砂に富み,多くは細壤土に屬する。
2. 黄土層は屡々小指大乃至30cm大の泥〓質の凝結物たる黄土人形を含む。
3. 黄土にして河床を占めるものは流水の作用により粘土分が運び去られ,残留するもの,は結局粘土分著しく少く,細砂分が多くなつてゐる。河畔にあるものは水による運搬若くは氾濫による堆積作用を受けることによの粘土分少きか若くは粘土分及び細砂分に富むかの何れかである。
4. 耕地・圃場・苗圃等に於ては多くの場合上層部は下層部に比し,梢粘土分少く粗砂若くは細砂が多い傾向が認められる。水及び風の作用による結果と考へられる。
5. 一般に膠質性小にして,吸濕水分の量は少い。
6. 比重は比較的大で平均2.707であるが,最小2.543,最大2.815で其の値は相當廣い幅をもつ。之は組成鑛物の種類著しく多く,夫々其の比重を異にする故,其の組成量割合の如何に關係するものと考へられる。
7. 最密状態に於ける容積量は最小127.1,最大146.4平均134.0であり,孔隙量は最小46.57%,最大54.66%,平均50.47%であり,容水量は容積百分率に於て最小33.60%,最大47.81%,平均39.69%,重量百分率に於て最小24.96%,最大42.88%,平均30.54%であり,最小容氣量は最小-0.78%,最大17.56%,平均11.02%であつた。
8. 反應は微アルカリ性である。
9. 腐植及び窒素の含量は甚しく小である。
10. 熱鹽酸可溶物の量は比較的多く,石〓・燐酸・加里に富む。石次は珪酸鹽としてのみならず炭酸鹽としても存在する。
樹木の生長に對しては腐植及び窒素の缺乏が甚しく,之が制限的因子として作用すると思料せられる故に.腐植の増加を圖ることが肝要で,之により窒素含量を増加せしめ得るは勿論のこと黄土の膠質性小なる缺黙も除去し得て正に一石二鳥の效果を期待し得る。即ち腐植の量を増加せしめることこそ灌水と相俟つて黄土肥培法の根底をなすものと言へる。

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