ジャーナル「集団力学」
Online ISSN : 2185-4718
ISSN-L : 2185-4718
日本語論文(英語抄録付)
人間科学における主観的言説の重要性
杉万 俊夫
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2009 年 26 巻 p. 1-13

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抄録

 人間が知ろうと知るまいと存在する事実を探求する自然科学においては、研究対象を一線の向こう側に据え、研究者は一線のこちら側から研究するのに対して、もう一つの科学、すなわち、人間科学においては、当事者(研究対象)と研究者が協同的実践を展開し、そこから知識を紡ぎ出す。本稿では、科学を、言説空間を豊かにする営みと捉えた上で、自然科学と人間科学の言説空間の違いを、廣松(1979, 1982)の言語論・判断論を援用して明らかにした。すなわち、言説空間の構成を、「人称的(指示・述定・表出・喚起)---- 没人称的(指示・述定)」の軸と「知覚現場的言説 --- 概念思考的言説」の軸によって整理し、自然科学の言説空間は、没人称的な知覚現場的・概念思考的言説によって構成されるのに対し、人間科学の言説空間は、準没人称的あるいは人称的な知覚現場的・概念思考的言説によって構成されることを論じた。これによって、両科学が共同研究を行う場合の人間科学の守備範囲を明確にするとともに、とりわけ、人称的な知覚現場的言説、すなわち、主観的言説が人間科学の言説空間で重要な地位を占めることを指摘した。

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© 2009 財団法人 集団力学研究所
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