総合病院精神医学
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原著
アルツハイマー病の周辺症状とその介護負担に影響を与える因子について
忽滑谷 和孝古川 はるこ永田 智行真鍋 貴子落合 結介伊藤 達彦中山 和彦
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2013 年 25 巻 3 号 p. 278-286

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抄録

認知症を抱えた家族の介護負担は大きく,患者自身のQOLにも影響を与える。今回われわれは,認知症の介護者が,介護上経験しているbehavioral psychological symptoms of dementia (BPSD)とその負担の程度,負担に与える因子を調査した。対象は東京慈恵会医科大学附属柏病院精神神経科の認知症専門外来を受診し,アルツハイマー病と診断された26名である。BPSDおよび介護負担の評価は日本語版Neuropsychiatric Inventory Questionnaire を用いた。易刺激性(57.7%),うつ(50.0%),アパシー/無関心(46.2%)が高頻度にみられ,中等度以上の負担を示した率で高かった項目として,易刺激性(15.4%),興奮(15.4%),抑うつ(11.5%),不安(11.5%)があげられた。 症状を有した者に限定したなかでの中等度以上の負担を示した割合では,興奮(40.0%),易刺激性 (26.7%),不安(33.3%),うつ23.1%,異常行動(33.3%),妄想(28.6%),脱抑制(25.0%)であった。出現率の高かったアパシー/無関心では中等度以上の負担を示すことはなく,BPSD が介護者にとって同程度の介護負担と感じているわけではない。BPSD に対して性急な対処をする前に,介護者の負担の程度を考慮することが大切であろう。clinical dementia rating(CDR),Revised Hasegawa Dementia Scale(HDS-R)のみが介護負担と相関を認め,他の神経心理学検査や患者背景因子との関連はなかった。今後,症例数を増やし,介護者側の要因も含め多角的に検討する必要がある。

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© 2013 一般社団法人 日本総合病院精神医学会
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