総合病院精神医学
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症例
マイコプラズマ肺炎に伴って統合失調症様症状で発症し,NMDA型GluR抗体(ELISA)陽性であった急性脳症の1例
高橋 卓巳荒井 三記子高橋 幸利加藤 温
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2019 年 31 巻 3 号 p. 315-321

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抄録

症例は30歳代前半の男性。入院の4日前から発熱,倦怠感などの感冒症状が出現し,その後,興奮,注察妄想,被害妄想,世界没落体験などの統合失調症様症状を呈し入院となった。入院検査でマイコプラズマ肺炎と診断し,抗生剤治療を開始した。経過中,昏迷,カタレプシー,自律神経亢進症状,ミオクローヌスなどが認められ,急性脳症と診断した。髄液,頭部画像検査ではマイコプラズマの中枢神経浸潤を示唆する所見は認めなかったが,血中および髄液中のNMDA型GluR抗体(ELISA)が陽性であった。特徴的な臨床経過,辺縁系症状,検体検査の結果から,本症例はマイコプラズマ肺炎により惹起されたNMDA型GluR抗体陽性脳炎が疑われた。マイコプラズマ肺炎の中枢神経系合併症である脳炎の一部には,自己免疫学的な機序の関与が疑われるものもあり,同様に自己免疫反応によって発症する抗NMDA受容体脳炎との関連が疑われた。

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© 2019 一般社団法人 日本総合病院精神医学会
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