総合病院精神医学
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症例
当院のクロザピン使用に関する報告
─その恩恵を最大限にするために今できること─
豐田 勝孝金沢 徹文久保 洋一郎中野 友義山内 繁木下 真也川野 涼米田 博
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2019 年 31 巻 4 号 p. 440-447

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抄録

clozapineは難治性統合失調症に適応を有する唯一の薬剤で,本邦での上市後10年が過ぎている。しかしながら,CPMS(クロザリル患者モニタリングサービス)登録や18週間の入院が必須であるなど導入にハードルが高い状況があり,その臨床上のポテンシャルを十分に生かせてはいない。当科にてclozapineを導入した17症例の経験では,約30%の中断例が認められ,反応不良例も認められた。今後は認知機能障害の進行した状態からの導入ではなく,発症早期から導入しやすいネットワーク構築が必要となる。また,導入後の中断例を少なくするために,好中球減少などの重篤な有害事象の発生に対しいち早く介入し得る医療現場の工夫も求められている。さらに,地域差や施設間の差を最小限にする工夫も求められている。本邦の臨床への導入までに多くの時間を要したこの薬剤の恩恵を最大限にするため,現場の経験や叡智を結集していかないといけない。

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© 2019 一般社団法人 日本総合病院精神医学会
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