2022 年 34 巻 2 号 p. 175-184
非けいれん性てんかん発作重積状態(non-convulsive status epilepticus:NCSE)は意識障害を基盤として様々な行動や精神的な変調を来し,患者と家族のQOLに大きな影響を与える。今回われわれは,NCSE時に心因性の症状が出現していることを見出し,治療方針に変化を与えた症例を経験した。症例は前頭部起始のNCSEが主症状と診断されていた難治性てんかんの30歳代後半の女性。半年前より10日周期で2日間にわたって意識減損し,断続的に粗大な運動症状を伴う興奮を示すようになった。長時間ビデオ脳波検査では,NCSEの最中に反応性低下,全身の緊張,上腕の運動症状がみられたが,生理食塩水投与後に脳波所見の改善がないまま症状が消失した。退院後,薬剤調整と並行して心理的問題にも焦点をおいた外来加療を継続しQOLの改善を得た。患者を包括的に支援するためには,すでに難治性てんかんと診断されてきた症例においても心理,生活面の評価が重要である。