2023 年 35 巻 2 号 p. 121-128
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行とその感染拡大防止策は,自殺関連事象を含むメンタルヘルスの問題に様々な影響を与え,日本では若年・女性の自殺者が増加したことが問題となっている。また,COVID-19流行後,高度救命救急センターに搬送された自殺企図者の臨床的特徴においても,日本の自殺者の変化を反映した傾向が認められるようになった。
われわれはCOVID-19の流行による総合病院での自殺未遂者ケアの変化を検証することを本稿の目的とした。当院では,高度救命救急センター・精神科ともに自殺未遂者ケアが行われているが,COVID-19の流行はそれぞれの診療科での対応に変化をもたらした。コロナ禍の自殺未遂者ケアで特に工夫を行った点としては,高度救命救急センターでは家族対応,精神科では関係諸機関との連携があげられる。
またCOVID-19流行は医療従事者に大きな負担を与えており,総合病院の精神科医はコロナ禍における医療従事者のメンタルヘルスへの対応にも取り組んでいく必要がある。