自閉スペクトラム症(ASD)の特性(社会的コミュニケーションの困難,持続的・反復的行動様式,狭い興味の範囲など)を具体的な生活困難と結びつけて理解することは,患者個人の苦痛を理解し,支援者の対応を前向き・具体的に変化させていくための貴重な情報源となる。本稿では成人期ASDの特性,外来で発生し得る困難の具体例,そして対応の指針をまとめる。外来で発生し得る困難例は,患者が経験し得る困難の予測に利用できるだけでなく,背景にASDがあるかもしれない患者の発見にも利用可能である。対応方針としてa)明確で具体的なコミュニケーション,b)予測可能なルーチンの提供,c)知覚特性の理解と対処,の3点が重要となる。これらの対応においては応用行動分析(applied behavior analysis:ABA)を用いて対応策が検討されることが多い。こうした支援を通じて質の高い医療サービスにつなげていきたい。