2025 年 37 巻 2 号 p. 131-139
本稿では,糖尿病患者の生活習慣支援に対する,アクセプタンス&コミットメント・セラピー(acceptance and commitment therapy:以下,ACTとする)の適用について概観した。ACTは診断や問題を問わずに適用可能な,第3世代の認知行動療法である。その基本方針は,患者の生活の質向上につながる,本人にとって価値ある行動の増加である。そして,患者のセルフケア行動促進に向けて,思考に囚われず,不快な体験を受け入れつつ柔軟に振る舞える状態である「心理的柔軟性」を高める。近年の研究より,糖尿病患者の心理・行動的課題への心理的柔軟性の関与や,ACTの有用性が示されつつある。本稿の後半では,そうした研究から示唆される心理的柔軟性パターンによる患者の特徴と,支援の方向性を例示した。そして,ACTが支援者や支援チームにも適用可能であることと,その意義を紹介した。