大学病院精神科は診療,教育,研究の3つの使命を担い,地域精神医療において特殊な位置づけにある。本論文では,筆者の前勤務先である熊本大学病院神経精神科を例として,大学病院精神科が地域において期待される役割と現状の課題を分析した。熊本県は精神科医療資源が熊本市とその近郊に集中し,単科病院が中心的役割を果たしている。熊本大学病院神経精神科は県内唯一の大学病院精神科として,ニューロモデュレーション治療,精神・身体合併症医療,認知症医療,児童思春期医療など多岐にわたる役割を期待されている。しかし,深刻な人員不足により期待される役割を十分に果たせない状況にある。この問題は全国的な傾向であり,解決には診療・教育・研究の分業制導入,病床運用の効率化,地域連携体制の刷新など抜本的な改革が必要である。大学病院精神科の持続可能性確保には,従来の医局制度からの脱却と新たな地域協働モデルの構築が不可欠である。