日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
症例報告
人工肛門閉鎖創との皮膚瘻形成にて発見されたS状結腸癌の1例
佐々木 省三鎌田 徹竹下 雅樹能登 正浩尾山 勝信吉本 勝博神野 正博
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 42 巻 1 号 p. 94-99

詳細
抄録
 患者は42年前に腸骨骨髄炎にてS状結腸に人工肛門が造設され40年前に閉鎖された既往のある58歳の男性で,人工肛門閉鎖創からの膿排出を主訴に来院した.創部に便汁の排出を伴う瘻孔形成を認め,瘻孔造影検査,注腸透視検査では結腸癌による結腸皮膚瘻の形成と考えられた.内視鏡検査にてS状結腸に2型腫瘍を認め,生検にて腺癌と診断した.CT所見はS状結腸癌の腹壁浸潤であり,明らかな転移を認めなかった.腹壁浸潤,皮膚瘻を伴うS状結腸癌と診断し,リンパ節郭清を伴うS状結腸切除と腹壁合併切除を施行した.病理組織学的検査所見上,癌は皮下まで浸潤した中分化型腺癌であり,皮下膿瘍を介して皮膚瘻を形成していた.根治度はAであった.本症例は腹壁の筋膜欠損という脆弱な部位から癌が皮下まで浸潤し,膿瘍を介して皮膚縫合部に瘻孔を形成したものであり,皮膚瘻形成には手術創による腹壁の脆弱性が関与していると考えられた.
著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top