日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
原発性胆汁性肝硬変の経過中に出現し高分化型肝細胞癌との鑑別に難渋した肝血管筋脂肪腫の1切除例
大河内 治竹田 伸橋本 良二高見 悠子服部 正嗣松下 英信小林 大介坪井 賢治加藤 伸幸川瀬 義久
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2009 年 42 巻 2 号 p. 172-176

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抄録

 症例は61歳の女性で,53歳時より原発性胆汁性肝硬変・シェーグレン症候群・膜性腎症にて加療中である.今回,右季肋部痛を主訴に受診し,腹部CTで肝左葉外側区域に径9 cmの腫瘍を指摘された.身体検査所見では掻痒感を認めるも黄疸はなく,血液生化学検査で胆道系酵素・IgMの上昇,抗ミトコンドリア抗体陽性を認めた.肝炎ウィルスマーカーおよび腫瘍マーカーは陰性であった.画像検査所見にて腫瘍は被膜様構造を伴う境界明瞭な腫瘤として描出された.内部は脂肪成分に富み造影による早期濃染を認めた.鑑別診断として大型の高分化型肝細胞癌と肝血管筋脂肪腫が考えられたが,確定診断はつかず肝左葉切除術を施行した.摘出標本の病理組織学的検査にて肝血管筋脂肪腫と診断された.術後1年経過した現在のところ明らかな再発所見を認めていない.今回,原発性胆汁性肝硬変の経過中に急速に増大した肝血管筋脂肪腫の1例を経験したので報告する.

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