2009 年 42 巻 5 号 p. 528-532
症例は53歳の男性で,2007年6月初旬より左上腹部から背部にかけての疼痛を認めたが放置,次第に疼痛が増強してきたため6月下旬に当院を受診した.腹部所見は板状硬で,腹部CTにて膵尾部の膿瘍状の所見,脾臓にも梗塞性病変を認めた.膿瘍形成を伴う急性膵炎の疑診にて同日緊急開腹術を施行した.腹腔内全体に膿性腹水を認め,膵尾部は硬結し脾臓・横行結腸脾彎曲部と一塊となっており腫瘍と考えられた.脾臓には梗塞巣がみられ,下極で膿瘍化し膿汁の流出を認めた.膵尾部腫瘍は後腹膜に広範囲に浸潤しており,根治手術は不可能であった.しかし,脾臓・横行結腸の切除が必要であったため,腫瘍に切り込む形で膵尾部・脾臓・結腸脾彎曲部を切除し,横行結腸人工肛門を造設した.膵病変は低分化型腺癌で横行結腸に浸潤しており,脾梗塞とあいまって脾膿瘍を形成したと考えられた.かかる症例は非常にまれであり若干の文献的考察を加えて報告する.