日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
症例報告
アニサキス症による成人小腸重積症の1例
日比 康太小方 二郎三室 晶弘伊藤 一成袴田 安彦
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 42 巻 6 号 p. 669-673

詳細
抄録

 腸アニサキス症による腸重積症はまれであり,腸重積症を伴った空腸アニサキス症の1例を経験したので報告する.症例は35歳の男性で,夕食にイカの刺身を摂取し,深夜より心窩部痛および嘔吐が出現した.当初は急性胃腸炎と診断し保存的治療を行っていたが,翌日の腹部computed tomography(以下,CT)にて空腸に同心円状の層状構造を認め腸重積と診断し緊急手術を施行した.手術所見ではトライツ靱帯から約15 cmの空腸に順行性に腸重積を認めた.用手的に整復を試みたが,腸管の浮腫が高度であったため約30 cmの空腸切除を施行した.肉眼検査所見では嵌頓部粘膜は著しく浮腫性で壁全体が肥厚し一部に発赤した浮腫状粘膜を認めたのみで,病理組織学的には著しい好酸球浸潤とアニサキスの虫体の迷入を認め小腸アニサキス症と診断した.小腸にアニサキスが迷入し,その部位が先進部として腸重積を惹起したと考えられた.

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top