日本消化器外科学会雑誌
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原著
原発性十二指腸癌27切除例の臨床病理組織学的検討
猪瀬 悟史土屋 嘉昭野村 達也梨本 篤瀧井 康公藪崎 裕中川 悟田中 乙雄太田 玉紀
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2010 年 43 巻 2 号 p. 135-140

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抄録

 はじめに:原発性十二指腸癌は頻度の少ない疾患であり,また十二指腸特有の解剖学的特性などもあり治療方針や手術術式などが確立されていないのが現状である.今回,当科における手術成績を検討したので報告する.方法:1992年1月から2007年12月までに当科で外科的切除を施行した原発性十二指腸癌27例を対象とし,臨床病理組織学的に検討した.結果:壁深達度が進むにつれリンパ節転移陽性率が上昇する傾向がみられた.深達度pSI症例のほとんどが膵浸潤陽性であった.5年累積生存率は50.0%で,単変量解析での有意な予後規定因子は症状の有無,腫瘍マーカー上昇の有無,壁深達度,膵浸潤の有無,リンパ節転移の有無であった.リンパ節転移陽性例の転移個数においても5年累積生存率に有意差を認めた.考察:手術術式に関しては,粘膜癌に対しては内視鏡的粘膜切除や十二指腸局所切除などの縮小手術が可能と考えられた.深達度pSS以上の進行癌に対しては幽門輪温存膵頭十二指腸切除術または膵頭十二指腸切除術を標準術式とし,十二指腸乳頭部癌に準じた2群リンパ節郭清に加えNo. 6, 8ap, 9, 12apなども郭清すべきと考えられた.治療方針確立のためには,リンパ節転移個数,壁深達度,膵浸潤の有無に応じたステージ分類,あるいは主占居部位に応じたリンパ節群分類など,十二指腸癌独自の取扱い規約が望まれる.

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