抄録
回腸嚢炎は潰瘍性大腸炎に対する大腸全摘・回腸嚢肛門(管)吻合術後に発症する長期合併症であり,多くはciprofloxacinやmetronidazoleなどの抗菌薬内服により軽快する.我々はこれらの治療に抵抗した回腸嚢炎患者の便中にClostridium Difficile toxin(以下,CD toxin)を検出した3例を経験したので報告する.3例中2例は以前の回腸嚢炎に対しては通常の抗菌薬が奏効していたが,再燃時には効果を認めず,この時点で便中CD toxin陽性と判明した.残り1例は回腸嚢炎初発の時点で通常の抗菌薬治療が効果なく,便中CD toxin陽性と判明した.3例とも「C. Difficile関連難治性回腸嚢炎」と診断し,vancomycin内服により治療したところ速やかに軽快した.通常の抗菌薬治療によって改善しない回腸嚢炎ではC. Difficileの関与を疑い,適切な抗菌薬治療を行う必要がある.