日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
Vater乳頭部原発印環細胞癌の1例
内川 裕司中田 岳成三輪 史郎小林 聡上原 剛宮川 眞一
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2010 年 43 巻 4 号 p. 391-397

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抄録
 Vater乳頭部印環細胞癌の1切除例を経験したので報告する.症例は69歳の女性で,嘔吐を主訴に来院された.術前精査にて十二指腸下行部の著明な狭窄と総胆管,主膵管の拡張を認め,Vater乳頭部癌の診断にて膵頭十二指腸切除術が施行された.切除標本は十二指腸下降脚の高度な壁肥厚および内腔の狹小化を認めたが,十二指腸,胆管とも粘膜面の異常を認めず,またVater乳頭部は白色変化を認めるのみで腫瘤,潰瘍形成なく肉眼的には原発巣の同定は困難であった.病理組織学的にVater乳頭部に粘膜の脱落および密な印環細胞癌の増殖を認めVater乳頭部原発印環細胞癌と診断された.漿膜外浸潤,リンパ節転移を伴っており,術後補助化学療法として第42病日よりTS-1の投与を開始,術後37か月で無再発生存中である.Vater乳頭部印環細胞癌はまれな疾患で,国内外で自検例を含め26例の報告を認めるのみである.
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