日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
門脈ガス血症を呈した閉鎖孔ヘルニア嵌頓の1例
樫塚 久記鎌田 喜代志久下 博之横山 貴司新見 行人川崎 敬次郎辰巳 満俊
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2010 年 43 巻 8 号 p. 870-875

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抄録

 症例は91歳の女性で,右大腿骨頸部骨折術後に突如,左大腿内側痛が出現,さらに腹部膨満,嘔吐も認め当院消化器科を受診した.腹部単純CTで拡張した小腸および肝S4の辺縁にガス像を認め,当科に紹介された.再度,骨盤腔を含めた腹部造影CTを行ったところ,肝S4に樹枝状のガス像と左閉鎖筋と恥骨筋の間に嵌頓するヘルニアを認めた.以上より,門脈ガス(hepatic portal venous gas;以下,HPVGと略記)を伴う左閉鎖孔ヘルニア嵌頓と診断し,緊急手術を施行した.骨盤内では左閉鎖孔が開大,回腸末端より230 cm口側の空腸が全係蹄型に嵌頓していた.嵌入腸管は壊死しており,小腸部分切除術およびヘルニア嚢を翻転・切除した.HPVGは腸管壊死で認められるまれな病態として重篤かつ予後不良の徴候とされる.今回,我々はHPVGを呈した極めてまれな閉鎖孔ヘルニア嵌頓の1例を経験した.高齢HPVG患者の診断治療を考えるうえで貴重な症例と思われたので文献的考察を加えて報告する.

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