日本消化器外科学会雑誌
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原著
腹膜播種を伴う原発性大腸癌に対する外科的治療の成績
山口 智弘絹笠 祐介塩見 明生森谷 弘乃介富岡 寛行塚本 俊輔坂東 悦郎金本 秀行上坂 克彦寺島 雅典
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2011 年 44 巻 10 号 p. 1231-1238

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抄録

 はじめに : 腹膜播種を伴う原発性大腸癌手術症例における予後規定因子を明らかにすることを目的とした.方法 : 2002年から2010年まで当院で手術施行した原発性大腸癌2,024例のうち,手術時に腹膜播種を認めた71例(3.5%)を対象とした.結果 : 腹膜播種の内訳はP1:19例,P2:20例,P3:32例であった.それらの3年生存率(生存期間中央値)はそれぞれ,P1:50.0%(34.6か月),P2:48.2%(22.3か月),P3:9.6%(13.3か月)でP1 vs. P3(P<0.01),P2 vs. P3(P<0.05)で有意な差を認めた(観察期間中央値14.4か月).予後規定因子に関する多変量解析では,手術根治度(HR,3.91:P<0.05)が有意な予後規定因子として抽出された.手術根治度B(N=16)と手術根治度C(N=55)の3年生存率は,それぞれ78.4%,15.9%であった(P<0.01).手術根治度B 15例(P3 1例除く)における腹膜播種程度別の無再発生存率,全生存率は有意な差を認めなかった(P=0.37,P=0.82).考察 : 腹膜播種を伴う原発性大腸癌における予後規定因子は,手術根治度であった.P1,P2では,腹膜播種の程度によらず,手術根治度Bを目指すことによって生存期間の延長が期待できる可能性が示唆された.

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