2011 年 44 巻 11 号 p. 1426-1433
症例は41歳の男性で,前医にて甲状腺癌,多発肺転移の診断で手術を行い,最終診断は濾胞癌の未分化転化であった.当院で頸部への放射線治療を行っていた.腹痛,全身倦怠感を主訴に来院した.左上腹部と臍右に鶏卵大の圧痛を伴う腫瘤を触知し,血液生化学検査では炎症反応の上昇,高度の貧血,凝固線溶系の亢進を認め精査加療目的で入院となった.腹部US,CTで小腸腫瘍による腸重積症の診断となり,腹腔鏡補助下で緊急手術を施行した.術後,経口摂取が一時期可能にはなったが,徐々に全身状態が悪化し,術後第20病日に永眠された.病理組織学的診断は甲状腺未分化癌による小腸転移であった.甲状腺未分化癌が小腸に転移することはまれで,国内外での報告は,自験例を含め5例である.若干の文献的考察を加え報告する.