抄録
症例は43歳の男性で,平成21年6月ころより嚥下困難を自覚した.上部消化管内視鏡検査にて,下部食道に約5cmの隆起性病変を認め,生検にて顆粒細胞腫と診断された.造影CTにて,多発肝転移が疑われた.当院入院となり,消化管閉塞の改善のため,下部食道胃上部切除,間置空腸再建,肝生検を行った.病理組織学的検査では,リンパ節転移は認めなかったが,原発巣と同様の腫瘍成分を肝臓に認め,肝転移と診断した.転移巣を有することより,悪性食道顆粒細胞腫と診断した.術後,肝転移に対して化学療法を行ったが,転移巣は増大し術後14か月目に原病死した.食道顆粒細胞腫はそのほとんどが良性疾患であるが,悪性例もまれに報告されている.その良悪性の診断には苦慮する場合もあり,十分な検討が必要である.